ぬるきゅー(ぬるめのセキュリティ日記)

気になったセキュリティ関連ニュースのぬるめのメモ

中国個人情報保護法公布後、初の民事訴訟

中国個人情報保護法はこの記事を書いている時点で未施行(施行は2021/11/1)だが、公布後初の個人情報漏えいに関する民事訴訟があったというニュース。

なお筆者は法律の専門家でも何でもないので、このブログの内容はゆめゆめ実務に利用されませぬよう。

http://www.workercn.cn/34055/202109/23/210923044824851.shtml

2020/7、重慶市沙坪坝区にある冷凍倉庫で、エクアドルから輸入した南米白エビの包装が新型コロナウイルスPCR検査で陽性になったと報じられた。

その2日後、今回の被告である重慶扬啟公司がWeChat公式アカウントで「重慶の輸入白エビ購入顧客名簿」と題して10,979人の消費者の住所、電話番号、氏名、身分証番号などの個人情報を公開したことで、その情報が大量に転載、転送されてしまった。

なぜこんなことをしたのか背景はよく分からないが、これに対して重慶市消費者委員会が不特定多数の消費者の合法的権利利益を守るために代理で民事公益訴訟を起こしたらしい。

注意すべきなのは当事者である消費者の代理で重慶市の消費者委員会が訴訟を起こした点だろう。重慶市消費者委員会いわく「消費民事訴訟は民事公益訴訟の一種で、民事公益訴訟はもっとも突出した特徴をもち、従来の民事訴訟法規則を突破するものだ」とのこと。

もともと中国の民事訴訟には代理人訴訟があるようなので、個人情報に関する民事訴訟でも当事者でなく消費者委員会のような代理人から訴えられる可能性があることは知っておくべきかも。

また記事によれば、重慶市の場合は、2021/7に重慶市消費者委員会と重慶市人民検察院が共同で「消費民事公益訴訟業務を着実な実施を協力して強化するための意見」を公開し、消費民事訴訟について全面的に連携する方針を明らかにしていた、ということもあるらしい。個人情報保護法とは無関係に、消費者代表訴訟については中国でも地域ごとにばらつきがありそう。

今回の訴訟は2021/9/2に重慶市第一中級人民法院で開廷、審議され、被告の会社側が自ら責任を認めたため、被告、原告双方が調停和解合意書にサインし、被告が「公開謝罪書」を提出することで、第一審で解決したようだ。

また調停和解合意書には、合意書の発効後1年間、被告の会社は消費に関する公益についてのPR活動を4回以上企画、制作、公開するよう書かれているとのこと。

1万人以上の個人情報を公開しても、すすんで責任を認めることで謝罪とボランティア活動でおさまっているのは、まだ個人情報保護法の施行前だからなのか、地方による裁量が大きいからなのかはよく分からない。