中国で2023/1/10施行の深層学習によるメディア合成規制法を読んでみた
2022/11/25、中国政府がディープラーニングによる音声、画像、動画の合成を規制する規則を公布、2023/1/10施行すると発表した。
規則の正式名称は「互联网信息服务深度合成管理规定」(インターネット情報サービス深層学習合成管理規定)。
規則の全文はこちらで読める。
互联网信息服务深度合成管理规定_信息产业(含电信)_中国政府网
規制対象は中国国内のインターネットサービス提供者で法人、個人とも含む。深層学習を利用して違法な情報や、フェイクニュースを制作、複製、配布、送信することを禁じている。
第五章によると、この規則において「深度合成」として列挙されているものは以下のとおり。
(一)文章生成、文体の変換、Q&Aなど、文書コンテンツを生成、編集する技術
(二)テキスト・トゥー・スピーチ、翻訳、音声属性など、スピーチコンテンツを生成、編集する技術
(三)音楽の生成、BGMの編集など、非言語の音声を生成、編集する技術
(四)人物の顔、顔の入れ替え、人物属性の編集、表情の操作、ポーズの操作など、画像、動画コンテンツの中の生体の特徴を生成、編集する技術
(五)画像生成、画像の拡張、画像の修復など、画像、動画コンテンツ内の非生物の特徴を生成、編集する技術
(六)3DCGによる再現、デジタルシミュレーションなど、デジタル化された人物、バーチャルシーンを生成、編集する技術
規制の内容としては、サービスプロバイダに対してセキュリティ管理体制や内部審査体制、クレーム対応体制などの整備を求めるもので、とくに変わったところはない。
ただ、自組織または委託先専門組織によるセキュリティ評価が必要なのは、以下二種類のサービス。
- 顔、人間の声など生体識別情報の生成、編集
- 国家安全、国家のイメージ、国家利益と社会の公共利益に影響する可能性のある、特殊な物体、シーンなど非生体識別情報の生成、編集
AIによる合成であることを分かりやすく表記しなければならないのは、以下のようなサービス。
- AIによる対話、文書生成など、人間による文章の生成、編集を模したサービス
- 合成音声、声の模倣など、個人の特徴を生成、編集するサービス
- 顔の生成、顔の変換、顔の操作、ポーズの操作など、人物の画像、動画を生成したり、個人の特徴を著しく変更する編集サービス
- 没入式バーチャルリアリティーの生成、編集サービス
- その他情報コンテンツを生成あるいは著しく変更する機能のサービス
中国の表現規制関連の法律として、それほど特殊な内容ではないと感じた。
2022/12/13追記 第十四条に個人情報保護関連の定めがあり、生体情報を処理する場合は事前に本人同意を得ること、となっている。